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コラム WHOハンセン病制圧大使:笹川陽平活動記

Vol.23 2017.3.30

国連への働きかけ(6)――差別をなくす「原則」が国連総会で可決

IMG_00832008年に国連人権理事会で可決された決議案には「原則とガイドライン」の作成も含まれていました。諮問委員会によるその検討で焦点となったのが、「隔離」や「収容施設の廃止」といった文言の取り扱いです。

「隔離」の問題とは、「ハンセン病は感染症であり、公衆衛生上の見地から、隔離の必要性がある」という委員会メンバーの意見によって、最終文案に「一時的な隔離もありうる」との文言が残されてしまったことです。私たちは、この「隔離」という言葉こそ、ハンセン病の差別を象徴するものだとして強く反対し、この文言ははずされることになりました。

また、「収容施設の廃止」とは、「かつて強制的に人々を収容した施設は、段階的になくしていくべき」との条文を入れたほうがよいという主張です。しかし、現実的には、いまもこのような施設に住み続けることを希望している人々が少なくありません。このため、私たちは「施設の廃止は、彼らの権利を剥奪することになる」と問題を提起し、これも削除してもらいました。

こうした紆余曲折を経て、2010年9月の国連人権理事会において、「原則とガイドライン」を含む差別撤廃決議は、ようやく全会一致で可決されました。しかし、私はこれだけで満足しませんでした。さらに、国連総会での決議を日本政府に要請したのです。その結果、同年12月、日本政府決議案が84カ国を共同提案国として、国連加盟国192カ国の全会一致で決議されたのです。

少し長くなりますが、ここにそのうちの「原則」について全文を紹介しましょう。

1 ハンセン病患者・回復者及びその家族は、尊厳のある人間として扱われ、他の人と平等に、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約および障害者の権利に関する条約を含め、各国政府がその締約国である他の関連する国際人権文書のほか、世界人権宣言に掲げられたあらゆる人権及び基本的自由を享有する。

2 ハンセン病患者・回復者およびその家族は、ハンセン病患者であるかまたはあったという理由で差別されてはならない。

3 ハンセン病患者・回復者およびその家族は、結婚、家族および親であることに関して、他のすべての人と同じ権利を享有する。この目的のために、
 (a) いかなる人も、ハンセン病を理由に結婚する権利を否定されない。
 (b) ハンセン病は離婚の理由になってはならない。
 (c)児童は、ハンセン病を理由にその親から引き離されてはならない。

4 ハンセン病患者・回復者およびその家族は、完全な市民権及び身分証明書の取得に関して他のすべての人と同じ権利を享有すべきである。

5 ハンセン病患者・回復者およびその家族は、選挙に立候補する権利、政府のあらゆるレベルにおいて公職に就く権利を含め、他の人と平等に、公務を果たす権利を享有すべきである。

6 ハンセン病患者・回復者およびその家族は、すべての人を受け入れる包括的な環境で働く権利や、募集、採用、昇進、給与、雇用の継続および昇格に関するあらゆる政策及び手続において、他の人と平等に扱われる権利を有 するべきである。

7  ハンセン病患者・回復者およびその家族は、ハンセン病を理由に学校または研修プログラムへの参加を拒否されたり排除されたりしてはならない。

8 ハンセン病患者・回復者およびその家族は、人間の潜在能力を最大限に発展させ、尊厳および自尊心を十分に実現する権利を有する。能力を強化された、また能力を発展させる機会を与えられたハンセン病患者・回復者及びその家族は、社会変革の力強い主体となりうる。

9 ハンセン病患者・回復者およびその家族は、みずからの生活に直接関係する政策およびプログラムに関する決定プロセスに積極的に参画する権利を有し、また積極的に参画すべきである。

この原則が国連総会で、全会一致で決議されたことの意味は、このうえなく大きなものでした。私が2003年に右も左もわからぬまま国連人権委員会のドアを叩いてから、気がつけば7年半のときが過ぎていました。

もちろん、私の闘いはこれで終わったわけではありません。ハンセン病患者や回復者、家族への差別は一朝一夕には解消しないからです。この「原則とガイドライン」をひとりでも多くの人たちに知ってもらうことが、それからの課題となりました。

啓蒙活動を徹底させるため、私は世界五大陸で国際会議を開催することにしました。この成果は、また次回にお話しましょう。

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