WHO Ambassador's Column
コラム
WHOハンセン病制圧大使:笹川陽平活動記
WHO Ambassador's Column
WHOハンセン病制圧大使:笹川陽平活動記
40年以上にわたる、ハンセン病との闘い。
現場に行き、実際に見た者にしかわからない、数々の問題。
そして、世界中に足を運ぶなかで出会った、忘れがたき人びと。
こうした日々のできことを、WHOハンセン病制圧大使の視点から、皆さんにお伝えします。
WHOハンセン病制圧大使
笹川陽平
Vol.23 2017.3.30
2008年に国連人権理事会で可決された決議案には「原則とガイドライン」の作成も含まれていました。諮問委員会によるその検討で焦点となったのが、「隔離」や「収容施設の廃止」といった文言の取り扱いです。 「隔離」の問題とは、「ハンセン病は感染症であり、公衆衛生上の見地から、隔離の必要性がある」という委員会メンバーの意見によって、最終文案に「一時的な隔離もありうる」との文言が残されてし...
Vol.22 2017.3.30
政治的な問題を背景に、それまで日本政府の提案にことごとく反対してきたキューバと中国。両国との交渉には、相当な戦略が必要でした。私はまず、ジュネーブにあるキューバ政府代表部を訪れ、大使に会うことにしました。そして開口一番、次のように切り出したのです。 「私はあなたの国の偉大な指導者、フィデル・カストロ議長とともに、WHOの表彰を受けたこともあります。カストロ議長はじつに立派な方で...
Vol.21 2017.3.30
私と日本財団のスタッフが精力的に働きかけを続けてきた「ハンセン病の差別撤廃」が、ついに国連の人権委員会総会で決議にかけられる――。そう喜んだのも束の間、2006年に大事件が起こりました。それは、国連の組織改編です。人権委員会が新たな組織「国連人権理事会」に変わるとともに、小委員会は廃止になるという内容でした。 この改組により、これまで、私たちの考えに理解を示してくれた委員たちは...
Vol.20 2017.2.13
インドネシアのハンセン病患者・回復者組織PerMaTaの代表を務める、マネクさんと対談を行いました。 17000を超す島々で成り立つ群島国家のインドネシアでは、その地理的要因からハンセン病対策が充分に行き届いていません。医師や看護師が不足し、患者の発見や治療が遅れています。また正しい知識もあまり普及しておらず、社会からの差別を恐れて身を隠す人が後を絶ちません。 ハンセン病への差...
Vol.19 2017.2.13
ハンセン病回復者国際ネットワークIDEAガーナ支部の会長を務める、コフィ・ニャルコさんと対談を行いました。 ガーナでは未だハンセン病への差別が根強く残っており、社会から追放された回復者が身を寄せ合って暮らしています。ニャルコさんは同じ差別の苦しみを体験した者として、回復者を励まし、彼らが故郷に帰れるよう支援しています。 「自分が変われば、世界は変わる」をモットーに、回復者たちの...
Vol.18 2017.2.13
ブラジルのハンセン病回復者組織MORHANのメンバーで、患者・回復者の人権回復のため活動するヴァルデノーラ・ロドリゲスさんと対談を行いました。 ブラジルでは1926~76年の間、ハンセン病の家族感染を防ぐため、親子の離別政策がとられました。現在、DNA鑑定を用いて引き裂かれた親子を再会させる活動も行われていますが、成功例は未だ多くありません。 ロドリゲスさんも、その離別政策に運...
Vol.17 2017.1.17
グローバル・アピールは、ハンセン病患者、回復者とその家族に対する差別撤廃を広く訴えるために、毎年世界ハンセン病の日に合わせて世界に向け宣言を発表するものです。 2017年は、1月30日にインド・デリーで、列国議会同盟(IPU)と共に発表します。 グローバル・アピール2017に向けて、列国議会同盟議長と日本財団会長が対談を行いました。 笹川陽平会長: 日本財団は2006年に第1回...
Vol.16 2016.8.22
国連への働きかけを進めるなかで、私には一つ気がかりなことがありました。それは「ハンセン病と人権」の問題が、「健康と人権」という大きなカテゴリーのなかの1テーマとして呑み込まれてしまうのではないか、という危惧でした。 2003年に初めて国連人権高等弁務官事務所に相談に行き、紹介されたのは人権委員会の「健康と人権」特別報告者である英国・エセックス大学のポール・ハント教授でした。さっ...
Vol.15 2016.8.22
私がようやく国連で発言する機会を得たのは、2004年3月の国連人権委員会の本会議でのことでした。与えられた時間はわずか3分間だったものの、53カ国の代表者を前にスピーチをすることができたのです。このときのスピーチは、国連での初めての「ハンセン病と差別」についての歴史的な公式発言となりました。少し長くなりますが、その内容をここに全文引用しておきたいと思います。 ハンセン病は、有効...
Vol.14 2016.8.4
ハンセン病はMDT(多剤併用療法)によって「治る病気」になったものの、世界各国の回復者たちは未だに、「社会から受け入れてもらえない」という厳しい現実を突きつけられています。私は常々、ハンセン病の対策は「医療的措置」と「差別の撤廃」を車の両輪として回していかなければならない、ということを国内外で訴えてきました。 ハンセン病患者や回復者の人権問題は、人類の歴史始まって以来の、古く根...