Books on Leprosy / ハンセン病図書室
遠藤周作
講談社 2012年発行
解説
大学生の吉岡が一夜かぎりで遊び棄てた娘ミツは、後にハンセン病の診断を受け、御殿場の療養所に送られる。数週間後、診断は誤りだったとわかるのだが、一度は自由を得て外に出た彼女が選んだのは、療養所にもどり、患者たちのために尽くすことだった。内心の声にしたがい他人に奉仕することを選んだミツの魂の清浄と、社長令嬢を射止めて世間並みの幸せを得たものの、かつて棄てた女への悔恨を抱えつづけた吉岡の心の寂漠のコントラストが鮮やかな、遠藤周作中期の名篇。