Books on Leprosy / ハンセン病図書室
フランツ・イルジーグラー アルノルト・ラゾッタ
白水社 2005年発行
解説
中世の都市ケルンで、市民の埒外に置かれた人々の姿を通して、そのころの習俗や観念をあぶり出した一冊。浮浪者や障害者、娼婦や刑吏など多種多様な「アウトサイダー」たちの中に、ハンセン病者を扱った一章がある。当時、発症した者は死者とみなされ、一般社会の中で暮らすことはできなかった。病院の数は少なく、患者たちは厳しい規則で縛られていたが、祭の時は外出もでき、ときには許しを得て町に出て物乞いに励んだという。その境遇の生々しい描写は、一般市民のハンセン病への強い忌避とともに、したたかに生きる患者たちの姿をも伝えてくれる。