2006年以来、毎年世界各地でハンセン病患者、回復者、その家族に対する差別撤廃を訴えてきたグローバル・アピール。その第11回目となった「グローバル・アピール2016」が、国際青年会議所の賛同を得て、1月26日、東京で開催されました。午前中に行われたグローバル・アピール宣言式典では、国際青年会議所が世界130カ国に有するネットワークを通じて「ハンセン病を理由とする差別が不当であること」を訴え、こうした差別と闘い、「ハンセン病患者らが他の人と同等の機会を得ることができる社会の実現を目指す」と世界に向けて呼びかけました。
ハンセン病患者、回復者、その家族に対する差別撤廃を世界に訴えかけるイベント「THINK NOWハンセン病 グローバル・アピール2016」が1月26日、笹川平和財団ビル(東京都港区)11階国際会議場で開催されました。日本での開催は昨年に引き続き2回目。2016年は日本において「らい予防法」が廃止(1996年)されてから20年という節目の年にあたります。
式典のオープニングで「歌声の響」を独唱する鮫島有美子さん
式典はソプラノ歌手、鮫島有美子さんによる「君が代」、そして「歌声の響(うたごえのひびき)」の独唱でスタート。「歌声の響」は1975年、天皇皇后両陛下が沖縄県名護市にある国立ハンセン病療養所「沖縄愛楽園」を訪れた際、入所者たちと交流されたことをきっかけに生まれた歌で、天皇陛下が作詞され、皇后陛下が作曲を手がけられたもの。独唱に続いては、世界各地のハンセン病医療や差別の状況を伝える映像「Leprosy in Our Time」が上映されました。
次に日本財団会長の笹川陽平氏が主催者挨拶で、ハンセン病は治る病気で治療は無料だが、そのことが広く知られていないためにより多くの国々で差別が生み出されたこと、こうしたことを解消するためにグローバル・アピールを2006年から始めたこと、昨年初めて日本で開催したところハンセン病について知らなかった若い人たちからも「もっと知りたい」などの声が寄せられてきたことなどを述べ、今年のグローバル・アピールは未来を担うビジネスリーダーである国際青年会議所からの協力を得て心強いと強調。さらに世界医師会、国際看護師協会、国際法曹協会、国連人権理事会諮問委員会、インドの国会議員の方々の出席に感謝の意を表し、最後に、「皆さん、力を合わせハンセン病の差別という大きな問題の解決に向けて、ともに立ち向かっていこうではありませんか」と呼びかけました。
「一人でも多くの方にハンセン病について考え、向かい合っていただきたい」と笹川陽平日本財団会長
続いて、国際青年会議所(JCI=Junior Chamber International)2016年会頭のパスカル・ダイク氏が、JCIは世界5000の地域社会がメンバーとなっている、そんな私たちが手を取りあい、前向きに進んでいくことでハンセン病の問題を解決していきたいと挨拶。日本青年会議所2015年会頭、柴田剛助氏も、ハンセン病療養所がある地域の会員会議所に積極的に呼びかけを行い、ハンセン病の正しい知識と差別、偏見をなくしていくための普及啓発事業を展開していきたい、と述べました。
挨拶するパスカル・ダイク国際青年会議所2016年会頭
式典には安倍晋三首相、昭恵夫人、塩崎恭久厚生労働大臣も臨席。安倍首相は「私は昨年に引き続き、この集いに駆けつけて参りました。その理由はハンセン病患者の方々に対して行なわれた重大な人権侵害を決して忘れない。また二度と起こしてはならないからです」とグローバル・アピール出席への思いを述べ、「ハンセン病に関する歴史や正しい認識を風化させることなく、確実に次の世代に引き継いでいくための取り組みを進めている」と述べました。
「ハンセン病に関する歴史や正しい認識を風化させない」と語った安倍首相
グローバル・アピール2016の発表は、ササカワ・インド・ハンセン病財団奨学生のロシーニさん、インド・ハンセン病回復者協会ビハール州リーダーのランバライ・シャー氏、そして国際青年会議所2016年会頭のパスカル・ダイク氏の3名。国際青年会議所が持つ世界中のネットワークを通じて、「ハンセン病を理由とする差別が不当であることを訴え、こうした差別と闘います」「ハンセン病患者と回復者、その家族が差別から解放され、彼らが内に秘めた可能性を発揮することができるよう、他の人たちと同等の機会が得られる社会の実現を目指します」と、世界に向けて宣言しました。
最後に、ハンセン病差別解消のための行動をテーマとした若者向けの映像と、幅広い分野で活躍する人々によるコメントを集めたハンセン病キャンペーン映像が流され、式典が締めくくられました。
グローバル・アピール宣言中の(写真右から)ロシーニさん、ランバライ・シャー氏、パスカル・ダイク氏