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イベントレポート/THINK NOW ハンセン病 キャンペーン 2017 INDIA

〈世界ハンセン病デー特別企画〉
〜明日に架ける橋〜

世界ハンセン病デー(※毎年1月最終日曜日)にあたる1月29日(日)、早稲田大学大隈記念講堂で〈世界ハンセン病デー特別企画〉〜明日に架ける橋〜と題してシンポジウム、朗読劇「あん」などが開催されました。

日時
2017年1月29日(日) 15:00〜
場所
早稲田大学大隈記念講堂

第一部
シンポジウム

司会
ドリアン助川
プレゼンター
■ハンセン病問題支援学生NGO 橋 ─ Qiao
張珏堯早稲田大学・商学部3年
田中健早稲田大学・人間科学部2年
菅沢誠士目白大学・社会科学部4年

シンポジウムでは、まず小説『あん』の原作者であるドリアン助川さんが舞台に登場。「小説『あん』を書いているときに国立療養所多磨全生園へよく通いましたが、チャオという団体のことは入所者の方から聞いて知っていました。若い人たちがお花見のときにみんなで来てくれてとてもうれしい、というお話だったのでぼくは最初、チャオというのは『お花見をする人たち』だと思っていたんです」と挨拶。その後、登壇者であるハンセン病問題支援学生NGO「橋 ─Qiao(チャオ)」のメンバー、張珏堯(ちょう・ぎょくぎょう)さん、田中健(たなか・たける)さん、菅沢誠士(すがさわ・まさし)さんを紹介しました。

ドリアン助川さんからの質問に答えるチャオ代表・張さん

現在チャオの代表を務める張珏堯さんは中国・安徽省出身の留学生。「人と人とのつながり」を大切にするというチャオの理念、普段行っている活動(中国快復村でのワークキャンプ、多磨全生園や栗生楽泉園といった国内療養所への訪問、『あん』の朗読会、映画鑑賞会など)について紹介したあと、ワークキャンプでの活動を通じて差別は外見からはじまること、快復村の村人と交わした会話を通じて家族を大切にしなければならないと強く感じたことなどを語りました。

続いて田中健さんが年2回、中国の快復村で開催されるワークキャンプの模様を写真、映像などを交えて説明。中国人学生25名、チャオのメンバー3名が参加した2016年冬のワークキャンプの様子、快復村近くの学校で行っているプロモーション活動などについても語り、「東日本大震災の被災地に行ったとき仮設住宅で暮らす人たちから、みんなが来てくれるだけでうれしい、一番恐いことは忘れられることなんだ、と言われてボランティアのイメージが変わった。快復村の近くにある学校で劇やレクリエーションといったプロモーション活動をしているのも現地の若者たちにハンセン病のことを知ってもらい、快復村を訪れるようになってほしいからです」とコメント。

菅沢誠士さんはワークキャンプを通じて感じたこと、中国で活動を続けている原田燎太郎さん(※NPO 家 -JIA- 資源調達部)との出会いなどについて、みずからのナレーションを交えつつプレゼンテーションをおこないました。休学して出かけた世界一周旅行のこと、途中立ち寄った中国快復村で出会った村人の死などについて触れ、「村人の死に直面してから、あんなに楽しみにしていたはずの旅がまったく味気ないものになってしまった。旅をやめようかと思う、と燎太郎さんにメールを送ったとき、返ってきた返事が忘れられない」というエピソードとともに、原田さんとのメールのやりとりなども紹介しました。

第二部
朗読劇「あん」

登壇者
中井貴惠(朗読)
ドリアン助川(朗読)
ピクルス田村(ギター)

続く第二部では俳優・中井貴惠さん(朗読)、作家・ドリアン助川さん(朗読)、ピクルス田村さん(ギター)による朗読劇「あん」が上演されました。台本は小説とも映画とも異なるエピソード、エンディングが追加されたもので、この朗読劇のためにドリアン助川さんが書き下ろしたオリジナル。上演前、ドリアンさんは小説『あん』を書こうと思ったきっかけについてあらためて触れ、小説を書き上げたあと、お世話になった方々に本を送ったこと、そのときに一番分厚い感想文を送ってくれたのが中井貴惠さんだったことなどについて語りました。

オリジナルの朗読劇は2人による朗読に加え、ギター演奏も交えて演じられた

「送っていただいた感想文を読んで、ぜひ朗読劇に参加していただきたいと思いました」とドリアンさん。中井さんも「原作者の方と一緒に朗読劇をやるのは初めての経験。その間に『あん』は映画になり、海外でも翻訳されて多くの読者に読まれるようになりました。この朗読劇も、全国各地でずっと続けていきたいと思っています」と朗読劇に対する思いを語りました。

早稲田大学は中井さん、ドリアンさんの母校ということもあり、ふたりが学生時代の思い出について語り合う一幕も。「私はテニス部だったので大隈記念講堂にはまったく縁がありませんでした」と中井さんが語ると、ドリアンさんも「ぼくが通っていた頃は夜になると大隈記念講堂のすぐ近くに屋台が出ていたんです。その屋台で一杯飲んで、ここの外階段で眠るというのが夏の素敵な夜の過ごしかたでした。ぼくもこういう形で舞台に立つ日が来るとは、想像すらしていなかったですね」とコメント。朗読劇ではアコースティックギターの演奏も交え、小説とも映画とも異なる独特の世界が1時間以上にわたって繰り広げられました。

シンポジウムの会場となった早稲田大学大隈記念講堂

上演後、舞台中央で挨拶したドリアンさんはメンバー不足で存続が危ぶまれているチャオの現状についても触れ、「日中の若者がワークキャンプを通じて交流し、お互いの人生を変えていく。今の日本にこういう学生がいるということを、もっと多くの人に知ってほしい。志さえ同じであるのなら、学生以外の参加者がいてもよいのでは」などと観客に呼びかけました。

ハンセン病問題支援学生NGO 橋 ─Qiao(チャオ)ホームページ
http://ngoqiao2006.wixsite.com/ngoqiao