1月30日(月)、「世界ハンセン病の日」(毎年1月の最終日曜日)に合わせて、インドのデリーで、「ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすために」と題した「グローバル・アピール2017」(宣言文)が発表されました。
「グローバル・アピール2017」は、WHOハンセン病制圧大使および日本政府ハンセン病人権啓発大使である笹川陽平氏の呼び掛けにより、世界171の議会が加盟する列国議会同盟(IPU)の共同宣言として、発信されました。「グローバル・アピール」は2006年に始まり今年で第12回目、ハンセン病回復者をはじめ、列国議員連盟、NGO関係者、メディア関係者など約300人が参加しました。
デリー近郊から多くのハンセン病回復者が出席
共同宣言では、「ハンセン病は薬物療法により完治する病気となり、これまでに世界中で1600万人以上の患者が治療を受けているが、病気に対する誤った認識が今なお残っており、社会的、経済的な差別が続いている」と指摘。「ハンセン病患者あるいは回復者であることによって起こる、あらゆる差別に反対し、スティグマと差別をなくすための非差別的な法律と政策の制定と施行を働き掛け、すべての人が自由で、尊厳と人権について平等である社会づくりを促進することを保証するよう求める」などと訴えました。
笹川大使は、グローバル・アピール式典の基調講演で、これまでグローバル・アピールを発信してきた経緯を紹介するとともに、列国議会同盟(IPU)と共同でグローバル・アピールを発信する意義を語り、各国の議員がハンセン病差別撤廃に果たす役割について語りました。
グローバルアピール式典で基調講演を行う笹川陽平氏
さらに、「ハンセン病の制圧まで最後の1マイルというところまで来ていると言う人もいらっしゃいます。しかしこの旅はまだ終わりません。私たちは今、ハンセン病に伴う差別のない社会を目指すという、病気の制圧の先にある終着点を目指しています。これからの旅にロードマップはありません。その道はより険しいものになるかもしれません。しかし私は、これからも多くの仲間と、そして本日をきっかけに新たにこの旅に加わってくださる皆さまと共に、この道なき道を切り開き、一歩一歩、ハンセン病との闘いの旅を続けていきます」と改めてハンセン病制圧に向けての決意を表明しました。
続いて登壇したIPUのサベル・チョードリー議長は、「ハンセン病には長期的な支援が必要である」と協調したうえで、「議員として実現しなければならないことは、議会や選挙区での発言、政策立案、予算執行である。ハンセン病とその差別がない世界をつくることが議員としての役割であり、IPUの精神である」と語りました。
グローバル・アピール2017宣言文読み上げ
この日出席が叶わなかったインドのナレンドラ・モディ首相は、ビデオメッセージのなかで「人々が尊厳をもって生きていくことがガンジーの教えである」と述べ、「ハンセン病との闘いには国の力も必要だが、皆さんの力も必要だ」と呼び掛けました。
モディ首相からビデオメッセージが届く
「グローバル・アピール2017」とともに行われたラウンドテーブル「ハンセン病と人権」には、回復者、列国議員連盟、NGO関係者など51名が参加、回復者と議員との対話を通して、ハンセン病にかかわる差別の状況について、またその改善策について議論がかわされました。
約300人の参加者で埋まった会場
このなかで、インドの回復者Mr.Mullaは、ハンセン病を患って高等教育を諦め路上生活やコロニーでの生活を送ってきた経験を語り、「尊厳のある生活が回復者にとって重要」と訴えました。
IPUサベル・チョードリー議長は、議員が理解すべきことは「人は生まれながらにして人権をもち、憲法はそれを守るためにある」ことだと述べ、ハンセン病の差別撤廃のためには言葉ではなく行動が必要であり、どのような差別関連法があるのかを調べたうえで、近日中にインドを再訪問し、コロニーを訪ねたいとの意向も明かし、会場から盛大な拍手が上がりました。
IPUチョードリー議長から記念品を渡される笹川陽平氏