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Topics 2018.11.29
日本財団は、一人でも多くの人がハンセン病への理解を深め、偏見や差別について
考える機会をつくるための運動「THINK NOW ハンセン病」を行っています。キャンペーンの公式記者である東洋大学の須田さんが、中国のハンセン病隔離村を訪れたときのことを記事にしてくれました。
キャンペーンは、ハンセン病についての正しい理解を促進し、企画者・参加者が共に学びの機会を得られる活動であればロゴを使用するだけで、どなたでも参加できます。
「ワークキャンプというものは私たちにとって非日常的なものであり、そしてまた、誰かの日常にお邪魔させていただくものである。」
※ワークキャンプとは、自ら労働(ワーク)をしながら現地に滞在する(キャンプ)をする合宿型のボランティア形態。
キャンプ中には日々東京という大都会で生活していたら到底経験できないようなことが味わえるし、見ることができない景色も見ることができます。なんとも貴重な経験だと私は思います。ワークキャンプと言っても色々な種類があり、FIWC関東委員会だけでも現在4か国で行っています。行く村が違うだけでも差は大きいのに国まで違ったら見えるものは大きく違ってくるでしょう。今回はその中でも、中国湖南省にあるシャードゥーシー村という村人たった6人の小さな村で私が経験したことをお話しようと思います。
今回の渡航はワークキャンプではなくビジット(訪問)という形で村に行きました。2つの何が違うのかと言うと、基本、ビジットは村に滞在中、決められたスケジュールはなく、人数も少人数で行きます。そのため村では時間に縛られず自分のしたいことが出来ます。そして、今回は女3人、しかも日本人学生のみで、そのうち2人は新キャンパーという攻めたメンバー構成で行きました。私自身はこの村に初めて行ったのは5年前でそれから毎年2回程度行っていますが、日本での準備期間も中国に着いてからも村に到着するまで、ずっと心配事は尽きませんでした。そして驚いたのは自分達よりも周りの方々が私たちを心配してくれたことでした。中国人キャンパーの友達・先輩方・村人…みんな揃って、「なにか困ったことがあったら、いつでも連絡して!」って言ってくれて優しさに包まれているなと感じました。そして村に着いてから、私はさらに自分たちがどれほど優しさに包まれているのか実感しました。
村に着き、村人に会った瞬間に私の名前を呼んで、よく来たねと笑ってくれました。その時、私はこの笑顔を見るために来たのだなと思い、心がポッと温かくなったような気がしました。私たちは村にいるときは自由行動で時間を気にしなくていいので時計を見ませんが、唯一、時間の目安になるのはご飯の時間です。村では基本2食でその全てを村人と一緒にご飯を食べます。村人が作ってくれる時もあれば一緒に作るときもあります。村人はみんな各自の家で作って食べるので、毎回色んな人の家を回ってみんなと一緒に食べられるようにしました。朝、村人の家に行って「今日お昼ご飯一緒に食べよ~」と言いに行くとみんなとても嬉しそうに「いいよ~」と言ってくれます。村人はみんな毎日一人でご飯を食べているので学生が村にいるときだけが唯一誰かと談笑しながらご飯を食べられる時間だと思うと…毎食楽しもうって気持ちになりました。村がある湖南省の料理は辛いと有名で、村人の作る料理ももちろん辛いのです。しかし、日本人キャンパーが辛いものにそんなに強くないっていうのをみんな知っているので私たちと一緒に食べる時は唐辛子の量を減らしてくれます。彼らが言うには唐辛子がないと料理は美味しくならないらしいのでゼロになることはあまりありませんが(笑)そのおかげか先輩方が村に行くようになってから、辛いものを食べるようになったというのはよく聞きます。その他にも小さなお手伝いをしたり、一緒に中国語の勉強をしたり、一緒にドラマを見ながらあーだこーだ言ったり、オールドキャンパーとの思い出を話してくれたり…つまり、一緒に何かをしている時ずっと楽しいのだと思いました。先ほど話に出てきた通り、村人はよく昔のキャンパーの話をします。シャードゥーシー村はQiaoと言う早稲田大学のハンセン病問題支援NGO団体が十年ほど前から中国にある現地NGOである「家-Joy In Action」と一緒にキャンプをしているので多くの日本人オールドキャンパーがいます。キャンパーの話をしている村人はとても嬉しそうで「あいつは何回も来たのに中国語がちっとも話せない」とか「誰々と誰々は初キャンプの時のキャンパーなんだ」と満面の笑顔で教えてくれます。もう何年も前のことなのにしっかりキャンパーの名前まで覚えていてそれほど村人にとってキャンパーは大事な存在だと感じました。ここ何年かは一年~半年に一回のペースで先輩方と集まって「シャードゥーシー会」なるものを開催しています。ここでは現在の村の様子を話したり、昔のキャンプの話をしたり、全然関係ない話もしたり、年齢も今の仕事も全然違う人達が集まるので色々な話ができてとても楽しいです。そこで得た先輩方の近況を村に帰ったときに村人に教えてあげると彼らはとても嬉しそうに話しを聞いてくれます。まるで自分の孫の話を聞いているかのように。
そしてシャードゥーシー村が繋げてくれた縁は他にもまだあって、村に行くようになってからワークキャンプを通じてたくさんの中国人の友達ができました。彼らも村が大好きで、村人とも仲良くて、すごく心の優しい子ばかりです。私が何か困っていると、こちらから手伝ってと言う前に手を差し伸べてくれます。それに何回助けられたかわかりません。そして自分の中での一番の変化は、村人や中国人キャンパーに出会って、中国に何度も行くようになったことによって中国や中国人に対して持っていたイメージが変わりました。私が出会った彼らは友好的で明るく優しい、私が持っていない良いところをたくさん持っている素晴らしい人たちでした。村に行ったことがきっかけでたくさんの人と出会って、中国のことが好きになり、中国語の勉強をすることを決意し留学にも行って、色々なことについてしっかりと考えていくようになり、色々な人の優しさや愛に触れて自分の中の変化はとてもたくさんありました。もしこの活動をしてなかったら退屈な大学生活を送っていたかもしれない、キャンプに参加していなかったら学生のうちにリーダーという経験をできなかったかもしれない、初めて行った村がシャードゥーシー村じゃなかったらキャンプを好きになっていなかったかもしれない、出会ったキャンパーが違う人たちだったら留学を決意しなかったかもしれない……タラレバを述べるときりがありませんがすべての出会いや縁の中で今の私がいるのだなと改めて感じました。今は少なくなっていると思いますが、「ハンセン病」「中国」と聞くと良くない噂やイメージを耳にすることがあります。それはほんの少しの情報や誤った情報から人々が勝手に生み出したものにすぎないと私は思います。私はキャンパーになってからそれを切実に感じました。色々な情報で溢れるネット社会の昨今、何が正しいのか判断するのは難しいと思います。大事になってくるのは自分の目で見ることなのかもしれません。それに気付くきっかけをくれた村や村人にはとても感謝しています。本当に彼らが私にくれたものは数え切れません。だから少しずつでも何か彼らに恩返しができるように、これからも村に通い続けたいと思います。
中華人民共和国 湖南省湘西土家族苗族自治州泸溪县武溪镇
<団体紹介>
FIWC関東委員会
1956年の創設以来、ハンセン病差別や災害・インフラ問題に対して国内外で様々なワークキャンプを行っています。小学校や橋、コミュニティハウスの建設などを現地調査からワーク、完成まで”村人と”共に行います。
https://fiwckantoblog.wordpress.com/
<ワークキャンプとは>
生活環境や設備が整っていない地域に滞在し、現地の人達と協力しながら生活インフラを整える滞在型ボランティアです。FIWC関東委員会中国キャンプでは、年に二回、春と夏の長期休みを利用して、中国人大学生と二週間程度の活動を行っています。活動内容は現地のハンセン病快復村に泊まり込み、インフラ整備(道路の補修や貯水タンクの建設など)や近隣の町へのハンセン病の啓発活動、村人との交流などがあります。
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日本財団「THINK NOW ハンセン病」 キャンペーン
公式記者 東洋大学経営学部 須田愛実
監修:日本財団 特別事業運営チーム 日高将博
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