Leprosy and the Islands
Leprosy and the Islands
島に隔離された者たちにとって、島は断絶の象徴。人々は周りを囲む海を眺め、故郷を想い、家族を想いました。
世界の各地でハンセン病の患者は、大小さまざまな島に隔離され、その断絶に涙し、
その中で新たな人生をつかもうと生き抜いたのです。
現在は、隔離の記憶をあえて抹消し、まったく新しい歩みをはじめた島、
隔離の記憶を乗り越え、新たな意義を見出そうとする島、状況は様々です。
世界の島の声に耳をすませば、日本の島の療養所のなりたちと、
その将来を考えるうえで重要なメッセージが聞こえてくるのではないでしょうか。
企画協力:長島愛生園歴史館×笹川保健財団
※今回とりあげた島は、世界に実在したハンセン病隔離の島々のほんの一部です。
※本コーナー掲載写真につき、典処や所在が確認できないものがありました。
お心当たりの方は、日本財団広報チームへご連絡ください。
バルト海に浮かぶ、
かつてのハンセン病スポット
エストニア共和国
世界最大規模の隔離の島から、
回復者とともに未来を築く自治の島へ
フィリンピン共和国
ペナンの南東のリゾートの島に眠る、
ハンセン病の記憶
マレーシア
カリブ海の孤島ならではの
医師・修道女・患者たちの苦難の歴史
トリニダード・トバゴ共和国
小説『封印の島』の舞台としても知られる
ギリシア、クレタの砦の島
ギリシャ共和国
中国人移民の患者が強制収容された、
バンクーバー沖の絶海の無人島
カナダ
ラウル・フォレローが手を差し伸べた、
西アフリカの「願いの島」
コートジボワール共和国
「ハンセン病の島」という負の歴史を遺産として残す
南海の孤島
オーストラリア
無人の島を開拓し、
英領時代の香港から患者を収容
香港
20世紀初頭、のべ37人が収容され、
短い歴史を閉じた隔離の島
アメリカ合衆国
南太平洋の島々から送られた
4,500人の患者の療養地
フィジー共和国
ハンセン病ケアの拠点から、
すべての障がい者ケアをめざすリハビリセンターへ
タイ王国
ダミアン神父の功績とともにハンセン病史の
象徴となったカラウパパ療養所
ハワイ・アメリカ合衆国
ネルソン・マンデラの流刑で知られる、
ハンセン病患者と政治犯の収容の島
南アフリカ共和国
日本の占領下で行われた隔離政策、
定着村事業を経て、新しい共生の時代へ
大韓民国
広東省江門市の26キロメートル沖合で、
約1世紀の隔離の歴史を刻んだ島
中華人民共和国
長島愛生園歴史館 学芸員
田村朋久
ハンセン病の患者を島へ隔離するという思想は全世界的に見られたもので、日本もそれを踏まえ、島への隔離を進めました。島を取り巻く海や川はそれだけで自然の障壁となりえたからに違いありません。
しかし、化学療法が導入された後、世界の島々の多くは隔離施設としての役割を終え、入所者たちは社会復帰や、他施設に移転しました。
この点からも日本の隔離政策がいかに異常なものであったかがうかがえます。
隔離施設ではなくなった療養所は、その後それぞれの歴史を刻みました。
障がい者のリハビリセンター、地域の拠点病院、刑務所、麻薬患者の更生施設、観光地、レジャースポット、歴史公園、世界遺産に登録されたものまであります*。
現在、日本の島に造られた療養所は、その設置場所の困難さから将来構想を考えるうえで数々の問題に直面しています。「世界の島は語る」が島の将来を考えるうえで何らかの指針になれば幸いです。
なお今回の資料作成にあたり、財団法人笹川記念保健協力財団、山口 和子様、小林早紀様には多大なご協力を頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
*ロベン島は政治犯の収容施設として世界遺産に登録されました。