Vol.04 2015.1.23
グローバル・アピール2015を迎えて
2015年1月27日、第10回「グローバル・アピール」が、東京で開催されます。グローバル・アピールとは、ハンセン病の差別に関するさまざまな問題を世界に訴え、人々に理解を深めてもらおうというキャンペーンの名称です。このキャンペーンは、私が呼びかけ人となり、2006年に始まりました。今までニューデリー(インド)、マニラ(フィリピン)、ロンドン(イギリス)、北京(中国)、サンパウロ(ブラジル)など、世界各地で開催してきましたが、今回の「グローバル・アピール2015」は、初めての日本開催となります。
2006年にグローバル・アピールが始まったそもそものきっかけは、1997年から開催されている「フォーラム2000」でした。チェコ共和国初代大統領、ヴァーツラフ・ハヴェル氏、ノーベル平和賞受賞者でもあるエリ・ヴィーゼル博士、そして私、笹川陽平の3人が発起人となって始まった国際会議です。その会議の場で私が語ったハンセン病患者や回復者に対するスティグマ、差別といった根源的な問題について、彼らが深い理解と関心を示してくれ、そのことがきっかけとなって、数年後のグローバル・アピールという新しい活動に彼らの賛同をいただくことになったのです。
第1回のグローバル・アピール(2006年1月29日にインド・ニューデリーで開催)には、ダライ・ラマ師(チベット仏教の最高指導者・ノーベル平和賞受賞者)、ジミー・カーター氏(元アメリカ合衆国大統領・ノーベル平和賞受賞者)、デズモンド・ツツ大司教(ノーベル平和賞受賞者)、ハッサン・ビン・タラル王子(ヨルダン・ハシェミット王国王子)など、世界を代表するリーダー、11名が名を連ねてくださいました。
それ以降、毎年、ハンセン病患者と回復者の尊厳を取り戻すために、アピール(宣言)を発信しています。多くの人々にメッセージを届けるため、また、ハンセン病患者と回復者の置かれている環境を改善していくために、世界のリーダー、主要な企業経営者、国際人権NGO、宗教指導者、法曹界の方々を含む様々な分野の個人や団体と協力して、アピール(宣言)を発信してきました。
記念すべき第10回のグローバル・アピールを日本で開催する意義は、三つあると思います。まず一つめは、日本のハンセン病回復者の方々が、海外のハンセン病回復者および、その支援者の方々と交流を深めることができること。二つめは、さまざまなサイド・イベントを開催することによって、幅広い人たちに、ハンセン病について色々な角度から知識を深めてもらえること。そして三つめは、ハンセン病という病気そのものの存在を知らない日本の若い世代の人たちに、ハンセン病や、それにともなうスティグマ、差別などについて、考える機会をもってもらうことです(そのためのシンポジウムなども予定しています)。
「グローバル・アピール2015」では、国際看護師協会をパートナーに迎え、看護職の皆さんとともに世界に向けてメッセージを発信します。看護の現場で病気に関する正しい知識を伝え、また患者の早期発見、早期治療を行うという意味でも、看護職の方々が担っている役割は、非常に大きいと言えるからです。グローバル・アピールでは毎年、特定のテーマを設定し、経済界、医師会、法曹界、人権活動団体などに賛同と協力をお願いしてきましたが、このようなパートナーシップを積み重ねていくこともまた、グローバル・アピールのもつ、大きな意義のひとつなのです。
各分野の人々が世界から集い、親しく交流しながら、お互いの理解を深める。それが、「ハンセン病に対する差別のない世界」への最初の扉になっていくのではないか。私はそう信じています。