世界各地のハンセン病コロニーで活動している若者たちが集まり、体験を語る合同シンポジウム「ハンセン病でつながる世界と若者」が1月22日、早稲田大学の公開授業として開催されました。会場には約50名の学生のほか、一般の聴講者も多数参加。登壇者たちは世界各地のコロニーで体験したエピソードを中心に、ハンセン病の正しい知識を伝えることの重要性、偏見や差別のない社会を目指す意義などについて語りました。
シンポジウムの冒頭、日本財団学生ボランティアセンター(Gakuvo)センター長の西尾雄志氏が「ハンセン病が制圧されつつあるのは人類悲願の達成と呼ぶべき快挙だが、日常生活の中では、ほとんど意識されない病気であることも事実。すべての人類が犯してきた罪に対する忘却の始まりにもなりかねない。現在を生きる人たちは、差別を受けたハンセン病患者、回復者の肉声を聞く最後の世代かもしれず、だからこそ若い世代にハンセン病のことを考えてほしい」と挨拶。
続いて中国NGO「家--JIA」を主宰し、12年前から中国の「快復村」でワークキャンプを行ってきた原田燎太郎さんが登壇。毎年約2000名が参加するワークキャンプの内容、村での協働を通じて、助けるのではなく、ともに暮らし考えるところから平等な関係を築くことの大切さなどについて語りました。現在JIAのワークキャンプは学生だけでなく、社会人も参加できるプログラムを用意しているとのこと。
「村に住み込んで協働し、友達や家族のような存在となることから平等な関係が生まれる」と中国での活動を語る原田燎太郎さん
この日のシンポジウムでは、中国、フィリピン、インド、ベトナム、日本など、世界各地で活動する7団体からのパネリストが、それぞれの国における現状と問題点についてプレゼンテーションを行ったほか、WHOハンセン病制圧大使、日本財団会長である笹川陽平氏も登壇しました。長年ハンセン病制圧に関わってきた経験から「ボランティア活動に取り組んでいくことは、とても素晴らしいことですが、“自分たちはいいことをしているんだ”という思いにとらわれないよう、ぜひ気をつけてほしい。1度しかない人生を心豊かにする、そのきっかけをいただいているという謙虚な気持ちが大切で、その結果として人のために役立つことができているのです」「チャレンジと失敗が許されることこそ、若者の特権。ハンセン病のような社会的課題に挑戦したという記憶、経験は、いつか必ず役に立つときがきます。最後は“なんとかなる”の気概をもって、ぜひリスクを恐れずにチャレンジしてください」と若者たちを激励。その後、登壇者を交えての座談会も行われました。
村人とボランティアの若者たちの間に生まれた心の交流について語るLIN Yinyueさん
インドで活動しているナマステ代表の梶田恵理子さん(右)とoaks代表の安田亜希さんは、カーストなどインドが抱える複雑な問題についてスピーチ。経済的自立をはかるため女性たちにストラップやマフラーなどの小物づくりを指導、それを日本で販売するプロジェクトについても語りました。