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Topics 2016.7.6
ハンセン病制圧大使・笹川陽平氏は、2016年6月7日から6月10日にかけてバチカン市国を訪問し、国際シンポジウム「ハンセン病患者・回復者の尊厳の尊重とホリスティック・ケアに向けて」に参加しました。
宗教の違いを乗り越え、ハンセン病差別の撤廃を世界に訴えることを目的にローマ教皇庁と日本財団が共催したこのシンポジウムには、宗教指導者たちと、各国のハンセン病回復者団体が集まりました。
◆6月8日
笹川大使は、教皇の一般謁見に出席し、フランシスコ教皇と会話し「レパー」という言葉の使用自粛などを要請しました。
「レパー」は旧約聖書に登場する言葉ですが、ハンセン病が薬で完治するようになった現代においても、誤った意味で、あるいは誤解に基づく悪いたとえで使用されることがあり、回復者たちへの偏見や差別を助長してしまうことがある言葉でした。
◆6月9日
バチカン市国のローマ教皇庁において、ハンセン病と差別を考える国際シンポジウム「ハンセン病患者・回復者の尊厳の尊重とホリスティック・ケアに向けて」が開催され、ローマ・カソリック、イスラム、ヒンドゥー、ユダヤ、仏教などの宗教指導者と、45カ国のハンセン病回復者など、約230人が集いました。
笹川大使はスピーチを行い、「ハンセン病についてもっと知ってもらうことが、差別とスティグマのない世界を実現する第一歩となります」と述べ、「長い間差別を受けてきた回復者たちが、さらなる差別を恐れ、自ら社会復帰をあきらめる傾向がある」と指摘、回復者らの尊厳回復に向けた宗教者の取り組みに期待を寄せました。
◆6月10日
シンポジウム2日目は「ハンセン病の減少」、「病者とその家族への支援」、「回復者の社会復帰」の3つの課題を中心に参加者たちが意見交換を行いました。
「公共交通機関やホテル、レストランの利用を禁止する条例が今も残されている」、「婚約を一方的に破棄された例がある」、「ハンセン病療養所に隔離される時、霊柩車に乗せられた」―。世界各地の回復者から深刻な事例が報告され、日本から参加した岡山県のハンセン病療養所・長島愛生園自治会の石田雅男副会長は「10歳の時に家族と引き離され長島愛生園に送られた。悲しく辛い70年だった」と振り返りました。
各宗教の代表者からは、「癒しのない病気を神は与えない」、「宗教上、苦しみの中で生きてきた人を無視することはあり得ない」、「生きるものは平等の権利を持っている」など、宗教がハンセン病患者、回復者の人権回復に大きな役割を負っていることを改めて確認する見解が示されました。
最終的にシンポジウム協力者である「善きサマリア人財団」、「ラウル・フォレロ財団」、「マルタ騎士団」と連名で、世界各地の回復者団体や各宗教指導者が結論と勧告を発表しました。
・ハンセン病に対する偏見と差別の闘いでは回復者が主役となるようサポートする
・レパーという差別用語を使わない。また、ハンセン病を悪い喩えに使わない
・宗教は教育や行動につながる活動に取り組み、重要な役割を果たす
・各国政府は2010年に国連総会で採択された差別撤廃決議を実行しなければならない
・差別的な法律は廃止しなければならない
・新たな患者を生まないためにも、新しい診断等、科学的な研究を進める
など、幅広い内容が結論と勧告に盛り込まれました。
日本財団のサイトで、全文をお読みいただけます。
http://www.nippon-foundation.