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【連載】学生が見た「THINK NOWハンセン病」#2:多磨全生園を初めて訪れてみた

Campaign 2018.11.7

topics1801107_1日本財団は、一人でも多くの人がハンセン病への理解を深め、偏見や差別について
考える機会をつくるための運動「THINK NOW ハンセン病」を行っています。キャンペーンの公式記者である立教大学の尾崎さんが、東京都東村山市にある多磨全生園にはじめて訪れたときのことを記事にしてくれました。
キャンペーンは、ハンセン病についての正しい理解を促進し、企画者・参加者が共に学びの機会を得られる活動であればロゴを使用するだけでどなたでも参加できます。

【以下記事】
topics1801107_2初めまして、立教大学3年の尾崎蒼と申します。私は先日、多摩全生園を初めて訪れました。ちなみにそのきっかけは、映画「あん」です。この映画を観るまではハンセン病についてはほぼ名前しか知らず、社会からこれほどまでひどく隔離と差別をされ暮らしていた人々がいたことに驚きました。また、そんな自分を恥ずかしく感じ、一歩踏み出すことを決めたのです。
 今回私が参加したのは全生園ワークビジットというスタディツアーです。その日は、大学生や中国からの留学生が参加していて、一緒に園内を周りました。

topics1801107_3 まず訪れたのが、園を大きく囲むように位置する「人権の森」です。約4万本あるという木々は、優しく私を迎え入れてくれました。木漏れ日が溢れ、鳥がさえずり都会にいることをふと忘れてしまうような、とても美しい場所です。
 ここは、子供を持つことを許されていなかった入園者の方々が、我が子のように苗を育てていたという歴史があります。太陽の強い光を遮るこの木々を通じて、その方々が今の私たちを守ってくださっているようにも感じました。
 
 さらに、園を散歩していると、鹿児島の「奄美和光園」の入園者の方に出会いました。彼は、自分がタクシー運転手で車を園内に止めて何度も怒られたこと、園の近くの海がすごく綺麗なこと、南国のフルーツが美味しくてついつい食べ過ぎてしまうこと…など様々なお話を聞かせてくださいました。苦しい歴史ではなく、微笑んでしまうような思い出が多かったです。そのお話を聞いて、一人の個人を「ハンセン病の人」というくくりで見てしまうことは大きな過ちだということを改めて痛感しました。「この病気だから」とか「かわいそう」とかの目線を最初から持っていることは逆に差別的であるということです。一つの肩書きでその人の人生が決まるわけないのです。当たり前だけど、無意識にしてしまっていたかもしれないと気がつきました。

 そして資料館では、病気の歴史、以前の施設の様子、「らい予防法」との戦いの記録などたくさんの資料を見学しました。中には目を塞ぎたくなるような展示も数々ありました。
 私が印象に残っているのは、ハンセン病に関する初めての法律である「癩(らい)予防ニ関スル件」です。これは患者の強制隔離を促すもので、1907年に制定されました。開かれた国日本になる過程でハンセン病の人々は見栄えが悪いから国辱的だとされました。そんな彼らを外国人から「隠す」ため作られたのがこの法律です。初めは浮浪患者のみでしたが、家族の保護下で暮らす患者も適用されることになり、「らい予防法」「無らい県運動」という、全国のハンセン病患者を強制隔離する動きにもつながりました。
 国が外からの印象を良くするために、本来守るべき国民の人権を無視する法律を作ったということは許されない歴史です。とても憤りを覚えました。(また、この「国の見栄えを良くするために隠す」という行為は、現在2020年に向けて国が行なっている原発放射性廃棄物不当処分や仮設有料化など社会の問題はおざなりにし、都市のみの再開発を促す動きにも通じるものがあるのではないのかと感じています。自説ですが。)

thinknowlogo 今回の見学を通して、強く思ったことがあります。それは実際に足を運んで学びに行くということの大切さです。あらゆる情報はネットでどこでも知ることができるように思いがちです。しかし、その地を自ら訪れてみることで、詳しい資料、場所の雰囲気、人との出会いなどから、新たな学びにつながるのではないでしょうか。(ちなみに、一緒に周った中国人留学生の方々も、「他の人も連れてきたい」「中国の施設にもいきたい」と口々に言っていました。)今回、奄美のおじいちゃんとの出会いや、知らなかった歴史、そこから考えることなどたくさんの学びがありました。また、第一歩です。

 さて、ここで終わりにせず、次の夏休みには奄美のおじいちゃんの綺麗な海に遊びに行こうと思います。そこで人生の話をしながら、一緒にお酒を飲もうと約束したのですから。

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日本財団「THINK NOW ハンセン病」 キャンペーン
公式記者 立教大学社会学部3年 尾崎蒼
監修:日本財団 特別事業運営チーム 日高将博
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