ハンセン病制圧活動サイト Global Campaign for Leprosy Eliimination

ハンセン病の現場にレンズを向けて vol.3 唯一の未制圧国ブラジルの叫び

ハンセン病の「制圧」とは、人口1万人あたり患者数を1人未満にすることです。WHOがこの目標を掲げてから、世界ほぼ全ての国でハンセン病の制圧が達成されました。しかしブラジルだけが、今もこの目標を達成できずにいます。発展を続ける大国にもかかわらず、なぜブラジルはハンセン病を制圧できないのでしょう。経済成長の陰に見捨てられた、患者と回復者の窮状にレンズを向けました。

本編 00分00秒

社会から見捨てられた患者・回復者

ブラジルは、現在世界に唯一残るハンセン病未制圧国です。オリンピックやワールドカップを開催する国力を持ちながらも、ハンセン病対策は充分に行き届いていません。広大な国土、数少ない専門病院、杓子定規な医療制度…。様々な問題が、都市部から離れた地域に住む患者の治療を妨げています。地方の貧しい人々は薬を取りに病院へ行くこともままならないのです。経済格差の広がるブラジルでは、ハンセン病の患者は置き去りにされているのが実態です。また1976年まで続けられていた隔離政策が、今も回復者とその家族を苦しめています。療養所で生まれた赤ん坊は強制的に孤児院へ送られたため、親と生き別れになるケースが多発しました。近年になり親子を引き合わせる活動が行われるようになりましたが、再会を果たせたのは100組に満たない数。未だ自分の出自がわからない回復者二世の数は、4万人を超します。DNA鑑定を用いても状況は変わらず、深刻なまま。問題が解決される目処はついていません。ブラジルの大地には患者と回復者の悲痛な叫びが響いています。

keypersons

  • 「お父さんのような手足になるのは…怖い…」ヘイス一家 (患者・回復者)

    ヘイスさん一家は、アマゾン川支流の中洲に住む5人家族。全員がハンセン病に罹りました。一家の生活は貧しく、老朽化した木造の家は今にも底が抜けてしまいそうなほど。また水道も通っていないため、体を清潔に保つことができません。全員が血や体液がついたまま裸足で歩き回るため、家族感染が進んでしまったのです。一家の中で最も症状が重いのは父親のジョゼさん。今も手足の変形が進んでいます。治療したいと考えているものの、病院まで薬を取りに行くことができません。交通費だけで月収の大半を費やしてしまうからです。長女ジュリアナさんの手にも斑点が増えてきました。父親のような手足になるのは怖い、と感じています。この一家のように経済的な理由で治療を受けられず、ハンセン病に苦しむ人がブラジルにはまだ数多くいるのです。

  • 「一時は、顔も知らない母親を憎んだこともありました」マリーザ・ダ・シウバ (回復者二世)

    ダ・シウバさんはハンセン病回復者を母親にもつ回復者二世です。ブラジル全土で行われた隔離政策により、生後間もなく母親と生き別れ、孤児院で育ちました。「ハンセン病患者の子」という理由だけで、会社を解雇されたこともあります。厳しい差別を受けてきため、自分の出自を偽って生きてきました。ダ・シウバさんは今も母親との再会を果たせずにいます。自宅から車で一時間ほどのハンセン病コロニーに母親がいると耳にし、訪れたこともありました。しかし名前も戸籍も変更されているため、結局誰が母親かはわかりませんでした。「自分が辛い思いをしなければならないのは、全て母親のせいだ」と、一時は顔も知らない母親を憎んだと語るダ・シウバさん。今は「親を大切にしてください」と涙ながらに訴えるようになりました。痛みを知る彼女の言葉には、強い力がこもっています。

Staff Credits

総合演出:浅野直広 / ディレクター:田中直人 / 編集・構成:石井永二 / プロデューサー:浅野直広、富田朋子
海外プロデューサー:津田環 / 取材:阿部修英 / AD:松山紀惠 / 撮影:西徹 / VE:岩佐治彦 / 音効:細見浩三
EED:米山滋 / MA:清水伸行 / コーディネーター:鎌倉廣幸、レオナルド山口 / 日本語版ナレーター:華恵
制作:テレビマンユニオン

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