The Documentary / ハンセン病の現場にレンズを向けて
vol.11
India
降り注ぐインドの強烈な日差し。手押し車に座った彼らとその間にさえぎるものは何もありません。
患部が目立つ姿勢を作り「お父さん、お母さん、お金をください」と叫んで、他人に手を差し出し続けます。
「物乞い」をすることでしか生きていけないインドの回復者たち。
彼らは日々何を思い生きているのか。
ハンセン病コロニーを3日間密着取材し、彼らの厳しい現実にレンズを向けました。
本編 32分22秒
世界一のハンセン病大国、インド。この国では毎年12万を超す人がハンセン病を発症しています。回復者の数は約1200万。その多くが家や故郷から追い出され、仕事に就くことができません。彼らに残された、日々の糧を得る唯一つの方法が「物乞い」なのです。
ハンセン病に罹ったというだけで差別され、物乞いせざるを得ない状況に追いつめられる。それが、インドの回復者に立ちふさがる現実です。
ラム・ダヤン・サラン(回復者)
20年前までサランさんは、故郷ビハール州で家族と農業に勤しむ日々を過ごしていました。ヒンドゥー教の熱心な信者であり、物乞いを見かける度に喜捨(進んで金品を寄付をすること)をしていたそうです。しかし、サランさんの人生はハンセン病を発症したことで一変します。家族が周囲から差別されることを恐れて、自ら故郷を後にしたサランさん。流れ着いたハンセン病コロニーで生きるには、「物乞い」をするほかありませんでした。
彼の日常にレンズを向けること。それはインドの回復者を取り巻く社会の厳しさを取材すること、そのものでした。
アニル・クマール(孫)
サランさんの孫、アニルくんは現在15歳。5歳の時に、祖父のサランさんに引き取られコロニーで育てられました。取材中も勉強を怠らないアニルくん。夢は「軍隊に入り、お金を稼ぎ、家を建てる」こと。それは、「おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、弟、家族みんなで暮らしたいから」なのだと教えてくれました。アニルくんには日々やらなくてはいけないことが沢山あります。牛の世話、町への買い出し、そして料理。サランさん夫婦を支えて暮らしているのです。
そんな彼のもう一つの望みは、「おじいちゃんに物乞いをやめてもらう」こと。でもその願いは心の中に閉じ込めています。物乞いをしなければ、おじいちゃんも自分も生きていけない。それがアニルくんの現実です。
総合演出:浅野直広 / ディレクター:奥田円 / 取材:石井永二 / プロデューサー:浅野直広、富田朋子 / GP:田中直人
海外プロデューサー:津田環 / AD:松山紀惠、渡辺裕太 / 撮影:西徹、君野史幸 / VE:岩佐治彦 / 音効:細見浩三
EED:米山滋 / MA:清水伸行 / コーディネーター:Sushil Doval、Arnimesh Kumar / リポーター・日本語版ナレーター:華恵
制作:テレビマンユニオン
vol.12
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vol.10
エチオピアのハンセン病回復者団体、ENAPAL(エナパル)。そのENAPALが今もっとも力を注ぐのが「マイクロクレジット(小口融資)」という就労支援への取り組みです。これにより、エチオピアでは回復者が仕事を持ち、社会復帰を果たす動きが高まっています。しかしその...