ハンセン病制圧活動サイト Global Campaign for Leprosy Eliimination

イベントレポート/THINK NOW ハンセン病 キャンペーン 2016 TOKYO

ハンセン病国際シンポジウム
「ハンセン病から差別を考える」

「グローバル・アピール2016」宣言式典に続き、国際シンポジウム「ハンセン病から差別を考える」が開催されました。シンポジウムでは、WHO世界ハンセン病プログラム チーム・リーダーのアーウィン・クアマン氏からの世界におけるハンセン病の現況報告に続き、世界各地の専門家などによるパネル・ディスカッションが2つ催されました。テーマはそれぞれ「健康に関する差別をどう克服するか(パネル・ディスカッション1)」「若者の視点(パネル・ディスカッション2)」。続いて女優で作家の中江有里氏をファシリテーターに迎え、宗教学者の山折哲雄氏と作家の髙山文彦氏による「ハンセン病・差別・宗教」についての対談がおこなわれました。

日時
2016年1月26日(火) 13:00〜17:40
場所
笹川平和財団ビル11階 国際会議場

パネル・ディスカッション1
「健康と人権----健康に関する差別をどう克服するか」

ファシリテーター
横田洋三公益財団 人権教育啓発推進センター理事長
パネリスト
クラウス・ラシュウィッツインクルージョン・インターナショナル会長
I.K.イロアルビニズム問題国連人権理事会独立専門家
ランバライ・シャーインド・ハンセン病回復者協会 ビハール州リーダー
平沢保治国立ハンセン病資料館運営委員
スティーブ・クラウス国連合同エイズ計画(UNAIDS)アジア太平洋地域事務所所長
福田暁子世界盲ろう者連盟 事務局長

国際シンポジウム最初のパネル・ディスカッションでは「健康と人権」と題して障がいや病気に対する差別、人びとの誤解や偏見といった諸問題が当事者の口から語られました。知的障がい者やその家族に対する差別、アルビニズム(先天性白皮症)の人たちに対する誤解にもとづく差別とその延長としての生存権の侵害、HIV患者たちがこれまでの差別との闘いで獲得してきたものと自分たちに関わる政策に関して意思決定過程に参加することの重要性、盲ろう者(視覚と聴覚に障がいをもつ人)の社会参画についてなど。こうした問題の多くはハンセン病患者、回復者やその家族たちが感じている差別やスティグマの問題と共通性をもっています。

インド・ハンセン病回復者協会 ビハール州リーダーのランバライ・シャー氏は患者数が多く差別も厳しいインドの現状について述べ、国立ハンセン病資料館で運営委員を務める平沢保治氏も許す心にこそ明日がある、小さな力を集めれば、どんなことでもできると未来にかける思いを語りました。最後に発言した盲ろう者連盟 事務局長の福田暁子氏は、盲ろうは病気ではなく肉体的条件のひとつにすぎない、ハンセン病をはじめとする差別やスティグマを解消するためには互いにサポートし、学び、シェアすることが重要、皆で一歩前に、一歩上に進まなければならない、と英語でスピーチしました。

写真左上:アルビニズムの人たちに対する差別、スティグマはハンセン病と共通性のある問題と語ったI.K.イロ氏
写真右上:ファシリテーターを務めた人権教育啓発推進センター理事長 横田洋三氏
写真左下:自らの辛い体験を踏まえながらも、許す心にこそ明日がある、と語ったハンセン病回復者の平沢保治氏
写真右下:盲ろうは肉体的条件のひとつにすぎない、互いにサポートして前に進むべきだ、と英語で述べた福田暁子氏

パネル・ディスカッション2
「若者の視点----ハンセン病問題から学べるもの」

ファシリテーター
アレー・オベンソン国際青年会議所事務局長
パネリスト
ジョイス・ワンマレーシア・スンゲイブロー入所者評議会評議委員
ヤン・シュンファンJoy In Action(JIA)プロジェクトマネージャー
安田亜希NPOわぴねす副代表理事
フェルナンド・ビルダウアーブラジル青年会議所2016会頭
オラトゥンジ・オイェイェミナイジェリア青年会議所2016年会頭

このディスカッションではハンセン病問題をいかにとらえ、そこから何を学ぶことができるかというテーマについて、さまざまな事例が語られました。パネリストはいずれも次世代をになう若者たち。回復者の両親をもつジョイス・ワン氏は2006年、ハンセン病療養所の様子を伝える書籍『希望の谷 スンゲイ・ブロー国立ハンセン病コントロールセンター(Valley of Hope, Sungai Buloh National Leprosy Control Centre)』を共同執筆した経緯、差別やスティグマをなくしていくためには当事者が声をあげなければいけない、という信念などを述べました。JIAのヤン・シュンファン氏は中国各地で行っているワーク・キャンプの実例を紹介し、若者の特権は時間と選択肢に恵まれていることだとしつつ、ワーク・キャンプ活動を通して自分で考える力、答えを探す力を育んでほしい、そこからリーダーが生まれるのだと思う、と若者のもつ可能性について力強く述べました。日本からは2011年以来、インドでワーク・キャンプやハンセン病コロニーの就労支援をおこなってきた安田亜希氏が登壇。昨年末に立ち上げたNPO「わぴねす」の活動と今後の目標などについて語りました。

写真左上:ファシリテーターをつとめた国際青年会議所・事務総長 アレー・オベンソン氏
写真右上:ハンセン病の歴史から学んだことを次の世代に伝えていかなければならない、と述べたジョイス・ワン氏
写真左下:自国の若者に何ができるかについて語ったフェルナンド・ビルダウアー ブラジル青年会議所2016年会頭
写真右下:インドでのワーク・キャンプ活動と就労支援活動を統合したNPOを新たに立ち上げた経緯について語る安田亜希氏

対談
「ハンセン病・差別・宗教〜我々に新しい文明は可能か」

ファシリテーター
中江有里作家・女優
対談者
髙山文彦作家
山折哲雄国際日本文化研究センター名誉教授

国際シンポジウム最後のセッションには『火花 北條民雄の生涯』などの著書で知られる作家の髙山文彦氏、国際日本文化研究センター名誉教授の山折哲雄氏が登壇し、対談をおこないました。
髙山氏は、ハンセン病とその差別の歴史は宗教史であり人類史でもあるとの大きな視点に立ち、ハンセン病は苦難のメタファーとして物語などに用いられ、宗教から差別が生まれるという大いなる矛盾のもとにもなったが、私たちはそのことについて深く考えなければならない、とコメント。山折氏も30代でのインドにおける体験、沖縄における共同体のあり方などについて触れ、差別を宗教で乗り越えることは可能かという問いは非常に難しい側面を有しているが、個々の人びとのなかにある原風景が障がいを乗り越える力になり得るのではないか、などと語りました。
ファシリテーターを務める中江有里さんも卒業論文で北條民雄を取り上げた際に垣間見た療養所における豊かな「院内文学」の歴史について語り、こうした文学が人びとの記憶から薄れつつあるのを残念に思う、と発言しました。
セッションの後半にはWHOハンセン病制圧大使、日本政府ハンセン病人権啓発大使でもある笹川陽平氏(日本財団会長)も議論に飛び入り参加。ハンセン病が薬で治る時代になったにもかかわらず、差別やスティグマが世界中に残っているが、科学や理性の力でこうした問題を乗り越えることは可能か、とより深いテーマについて話が進んでいきました。

写真左上:対談後半では笹川陽平日本財団会長も飛び入り参加し、話は差別と人間の理性などにも及びました
写真右上:弱法師(よろぼし)や小栗判官など日本の芸能・文学に登場するハンセン病について語った山折哲雄氏
写真左下:髙山文彦氏は北條民雄の日記に書かれた内容を紹介
写真右下:ファシリテーターの中江有里さんは北條民雄を見出した川端康成の功績、2人の往復書簡について語った